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地方企業M&Aと地銀

f:id:Knowledge_sync:20171112155751j:plain 日本の企業の約9割が中小企業だと言われている。 中小企業の経営者平均年齢が高齢化しており、後継者への事業の引継ぎがうまくいっていない。 www.zaikei.co.jp

中小企業社長の全国平均年齢は2016年12月時点で59.3歳と過去最高を更新した。(帝国データバンク調査) http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p170106.pdf

地方の企業と金融機関の実情

地銀は収益構造の転換を急げ :日本経済新聞

リーマンショック直後よりは景気は上向いているとは言え、思ったほど銀行の貸出残高も伸びていない。 地方の地場産業をメインとしている地銀については特に顕著だと言える。取引先としている企業の収益も大きく伸びていないことから、大口の融資案件も乏しく、銀行本来の融資業務で収益が伸ばせない苦しい状況。

そこで、地銀は預り資産といわれる投資信託や個人年金保険などの契約を伸ばし、手数料収入を稼いできた。

ただ、これは自行の預金を投信の運用会社や保険会社へ切り売りするようなものなので、メインのビジネスとは成りにくい。

金融庁からも言われている、金融機関としてのコンサルティング機能の発揮といったところで事業継承やM&Aといった業務の推進を考えるようになった。

M&Aの案件が増加傾向にあるとの報道もあるが、地方では進んでいない様子。 地方にもニーズがあると考えられるが、進まないのはなぜだろうか。

全国的には企業の経営者年齢を考えてみても事業承継の時期が到来していると考えられるが、後継者への引継ぎが上手くいっていない。

事例と経験者が少ない地銀

地方では商店街にある個人商店から地場中堅まで広く利用しているのが地方銀行だ。 地元企業との繋がりが強いはずの地銀も事業承継のニーズは理解しているはずだが、その多くの銀行は企業同士をマッチングさせた事例も乏しければ、経験者もいない。いわば業務に対する知見が足りない状況で、顧客のニーズに答えられていないか、もしくはニーズを発掘できていない。

地銀のいくつかはM&A専門の企業などに行員を派遣して経験を積ませているが、まだまだ実務を行える人員が少ないのが現状だ。

そのような中でも、早期に取り組んだ銀行では収益改善に寄与していると思われるところも出てきている。

4~9月の実質業務純益、武蔵野銀は14%増 :日本経済新聞

千葉銀、実質業務純益8%増 法人手数料が増加 :日本経済新聞

富山銀 今期、純利益見通しを上方修正 与信費用想定下回る :日本経済新聞

しかし未だ圧倒的に業務経験値が少ない銀行が多いのが現状だと思われる。

地銀はビジネスモデルを考えないといけない時期かも

ぶっちゃけ、M&Aは収益的にはかなり儲かるはず。 日本M&Aセンター・ストライク・M&AキャピタルパートナーズといったM&Aをメイン業務とする企業が日本の生涯給与上位にいることからも見てとれる。

生涯給料「全国トップ500社」ランキング | 賃金・生涯給料ランキング | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

ただ、M&Aは契約が取れなければ収入も無い、100か0かのような業務なので浮き沈みは激しいと思われる。

jp.reuters.com地銀は今まで地方の企業経営者と何代にも渡って取引してきたところも多いだろう。 経験値の豊富なM&A大手が地方まで手を回すかどうかは判らないが、今のうちにM&Aの事例を重ねて経験値を積んでおくべきだろう。

地方銀行はM&Aをしてお終いではなく、その後も長く付き合っていけるようにアフターM&Aも含め、既存のビジネスモデルから改革し、独自の強みを磨いていかなければいけない時期に来ているのではないかと思う。

EVシフトとそれに伴う諸問題について考えてみる。

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東洋経済の記事に電気自動車へのシフトについての記事があった。 米テスラの成長があるように、方向性としてはガソリン車から電気自動車へシフトしていくトレンドは確かにあると思う。

ガソリン車が排出するガスは都市部を中心に大きな問題になってきた経緯もあり、今後の電気自動車へのシフトは特にCO2排出量の削減に大きく寄与すると考えられている。 toyokeizai.net

記事では100年に一度の大転換期としているが、技術革新にあたりネックとなる部分を考えてみたいと思う。

現在の日本におけるCO2排出量は?

まず、環境問題について。自動車がCO2を出さなくなれば、日本にとって大きなインパクトがあるのだろうか? 現在の状況について、資料を確認しながら考えてみたい。

環境省が平成29年4月に出した温室効果ガス算定値(平成27年度)では、我が国の温室効果ガスはCO2換算で13億2500万トン。

環境省_2015年度(平成27年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について

環境省の同記事内にある付属資料では内訳はこのようになっている。

f:id:Knowledge_sync:20171104113809j:plain 出典:2015年度(平成27年度)の温室効果ガス排出量(確報値)<概要> http://www.env.go.jp/press/files/jp/105529.pdf

資料内の表2にある排出量シェアはエネルギー起源のものの集計になる。エネルギー起源とは機械を動かしたり、車を走らせることや家庭でガスを使うことなど、何らかの生産活動を行った場合に出るものと見て良いだろう。 資料を見てみると、運輸部門(自動車等)のCO2排出量シェアは18.6%となっている。排出量でいうと2億1300万トンになる。 電気自動車が普及すれば、ここの数値が減少することになる。

発電所などのエネルギー転換部門にも注目してほしい。 東日本大震災以来、太陽光を筆頭に再生可能エネルギーを推進する動きがあった。売電価格を設定して電気を買い取るなどの政策がそうだ。

しかし、未だに電力供給のメインは火力発電となっている。電気自動車の台数が増えることになると考えると、火力発電で出る排出ガスが増加すると考えられる。

f:id:Knowledge_sync:20171104124327j:plain 集計結果又は推計結果|総合エネルギー統計|資源エネルギー庁

出典:平成27年度(2015年度)エネルギー需給実績(確報)

表の化石燃料シェアを見てもらうとエネルギー供給のシェアは91.1%となっている。電気自動車の普及に合わせて、エネルギー供給方法についても考える余地がありそうだ。

EVが普及した場合の電力消費量はどうなるか?

もしも、日本にある自動車がすべて電気自動車となった場合を仮定しよう。 モデルとして、最近新型となった日産リーフを使って考えてみたいと思う。

www3.nissan.co.jp

このリーフ、積んでいるバッテリーは満充電で400キロ走れる40kWhのリチウムイオンバッテリーを積んでいる。 自動車を所有する人達が充電を行った時、どのくらいの電力が必要となるかを計算してみたいと思う。

まず、国内にある自動車の数を確認。国土交通省の自動車保有車両数統計によると平成29年7月時点で日本国内自動車保有台数は81,708,162台となっている。

わが国の自動車保有動向 - 一般財団法人 自動車検査登録情報協会

ざっくりと車両数は8,170万台として、例えばこれら全ての車がリーフとなった場合、電力の需要はどう変化するか。

国土交通省の統計では平成28年度中の自動車1台あたりの平均走行距離は59.19キロとなっており、ざっくりと1日60キロとする。 リーフのバッテリーでは400キロ走れるとすると、満充電から補充までの日数は400÷60=6.66日となる。 ゼロになってからでは充電できないことを考えると5日に1回は充電が必要になると考えられる。

つまり、5日に1回は満充電とすることになるので、リーフ1台につき5日に1回40KWh分の電力が必要となる。

次に、1台のリーフが1年間で必要となる電力だが、365÷5=73となるので、1年間に73回充電することになる。

73回✕40KWh=2920となるので、1年間にリーフが必要とする電力量は2920KWhとなる。

仮定として考えている日本国内の自動車が全てリーフだったら、必要電力量は以下のようになる。 8,170,000台 ✕ 2920KWh = 23,856,400,000KWh =23,856GWh(ギガワットアワー)

馴染みがあまりないので理解しにくいと思うが、1GWhはどのくらいの規模感かと言うと1ヶ月で1世帯が消費する電力で換算すると約3,000世帯分に相当する。

日本を走っている自動車が全て電気自動車に置き換わった場合には電力消費量が現在の発電所が供給する電力量では賄い切れないくらい増加するということが言える。

これからの動向はどうなるか?

前出の資料にあるように、現状の電力供給は化石燃料を燃やしている火力発電がメインだ。

EVシフトが進めば、電力がより必要となるが、太陽光や風力などのクリーンな発電は発展途上の為、賄い切れない。 今のままで行けば火力発電所の稼働を増やすか、原子力発電に頼らざるを得なくなる。

EVにシフトすることで、自動車から出るCO2は減少するかもしれないが、別なところで問題が出てくる。 中国や欧州では電気自動車普及に向けて政策レベルでの動きがあるが、断片的な情報しか無いため今後の電力供給をどうするのか疑問だ。

日本の自動車産業としては技術的に量産化ができるようになるのに多くの時間は掛からないように思うが、一気にガソリン車が電気自動車に変わるには電気をどうやって賄うのかを考えなければいけないと思う。

マクロな視点で見れば、発電時点でのCO2排出量の削減や代替できる発電方法の開発だろう。 ミクロの視点では電気自動車本体の低価格化や充電場所の充実がなければ、スムーズに普及していくことは考えにくい。

電気自動車を普及させることでCO2排出量が大幅増加となってしまっては本末転倒だ。ドラスティックな変化はそういった問題を解決した後にやってくるのではないかと考える。